人間交差点

あったことやなかったこと、ありもしないことやあってほしいこと。

めくばせ

下駄の音だけが鳴っている

ぴかぴか、しゅわしゅわと四方八方に光を伸ばした線香花火が、不意にぽつっと落ちた。 4年前の夏もそんなふうにして儚げに、でもめいっぱい光を散らしたのち、突然命を落とした。わずかでも指を動かしてはダメだと気をつければ気をつけるほど、その命はゆら…

愛煙家の貴方へ。

誰だって、忘れられない人のひとりやふたりいるだろう、と貴方は言いました。 ベランダから見える首都高は、今日も誰かをどこかへ運んでいます。愛しい人が待つ街へ、恋しい人が眠る家へ。できるだけ早く、まっすぐに。 しかし、わたしは変わらずここにいま…

"騙されてもいい"と思えたら、それは愛だ

ふたりでは、会わないようにしていた。 口紅は、いくつかの色を混ぜると決めている。1番近くでわたしを見ることのできる男に見破られないためだ。わたしの本性や考えていることを、唇の色ひとつで見透かされないためだ。 適当に選んだ3色で作った唇は恋の色…

真夜中がきれいなのは、ひかりが彼らを見守るからだ

わたしね、もし自分の好きな夢を見られるとしたら、真夜中に星をつかまえる夢を見たいの。 星をつかまえたいの? そう。 どんなふうに? まず、真夜中になったら家をそうっと抜けるの。わたしの家で飼っているカニンヘンダックス、見たことあるわよね? あの…

最低で最高な、平成最後の夏を。

平成最後の夏がやってくる。 わたしが高校生だったころ、もう3年も前になるが、あの頃はまさか「平成が終わる」だなんて思いもしなかった。 ‘‘JK’’というウルトラハイパー最強な肩書きがいつの日か無くなるなんてウソだと信じ、四方八方を緑に囲まれた田舎に…

恋愛感情よりも先に引き寄せた確信

それは、確信に近いものだった。 ‘‘あ、わたし、この人と結婚するだろうな’’ 左耳からスルリとわたしのなかへ入り込んできた声と、頭上から突然降ってきたことば。そして、これまでにない速さと深さで刻まれる鼓動。 口に咥え、火を付けようとしていた煙草を…

『愛するということ』

「そしてそれぐらいで、人を愛するにはちょうどなのだ。」 GWの足音が微かに聞こえているとはいえ、まだ4月。iPhoneの天気予報アプリによると外の気温は26℃らしく、(地球も終わりへと走り出したのか)なんて考えながらベッドの上で伸びをしたのち、ポツリと…

目が悪くて、ほんとうによかった。

友人のあおとふたりで、ブログをはじめた。 お互いに送り合った写真を元にショートストーリーを考えてみたり、小説の一文からふたりで違う物語を紡いだり、あったことやなかったこと、ありもしないことやあってほしいことを淡々と綴る。 会社の飲み会で疲れ…