まるで線香花火のようだ
夏はまるで、線香花火のようだ。
手の中で静かに弾けた最後の線香花火の火種がおちた先を見つめながら、そんな風に思った。
繊細で儚いのに、力強く短い命を煌めかせる姿は、夏とよく似ている。はやすぎるほどの時間の流れのなかの一瞬の煌めきで、人に色鮮やかな思い出を残していく。
だからだろうか。8月最後の今日、最後の1本の花火が弾けた瞬間に、言葉にできない物寂しい気持ちが胸を占めた。
思い出たちは心の中に残るのに、いつか色あせていく。そして、同じ夏は二度とやってこない。
あたりに漂う花火の残り香が風に流されるのを目で追いながら、涼しくなった夜の空気と鈴虫の鳴き声に耳を傾ける。
本当に今年も夏が終わってしまうんだな。
夏の最後の夜のなかに秋の訪れをを感じて、やっぱり寂しくなった。それでも、来年の夏との再会に思いを馳せて、今年の夏の思い出にそっと微笑んだ。