人間交差点

あったことやなかったこと、ありもしないことやあってほしいこと。

まるで線香花火のようだ

夏はまるで、線香花火のようだ。 手の中で静かに弾けた最後の線香花火の火種がおちた先を見つめながら、そんな風に思った。 繊細で儚いのに、力強く短い命を煌めかせる姿は、夏とよく似ている。はやすぎるほどの時間の流れのなかの一瞬の煌めきで、人に色鮮…

下駄の音だけが鳴っている

ぴかぴか、しゅわしゅわと四方八方に光を伸ばした線香花火が、不意にぽつっと落ちた。 4年前の夏もそんなふうにして儚げに、でもめいっぱい光を散らしたのち、突然命を落とした。わずかでも指を動かしてはダメだと気をつければ気をつけるほど、その命はゆら…

金曜日の夜、彼女の紫煙。

ああ、視界がぐるぐるまわってる。 どことない解放感に、浮き足立つ気持ち。それらに身を任せ、調子に乗って弱いお酒をいつもより早いペースで飲んでしまったのがだめだった。 賑わう同席者たちに、賑わう店内、全ての音がどこか遠く、ぼんやりと聞こえてる…

愛煙家の貴方へ。

誰だって、忘れられない人のひとりやふたりいるだろう、と貴方は言いました。 ベランダから見える首都高は、今日も誰かをどこかへ運んでいます。愛しい人が待つ街へ、恋しい人が眠る家へ。できるだけ早く、まっすぐに。 しかし、わたしは変わらずここにいま…

触れた指先から身体にはしる甘い痛みなど、知りたくなかった。

ふたりでは、会わないようにしていた。 失敗したな、と思う。これまで、ふたりきりにならないように、事あるごとに理由をつけて逃げてきたのに、今日は逃げられそうにもない。 目の前にいる彼は嬉しそうに、確かに、熱のこもった目で私を射抜く。そう、この…

"騙されてもいい"と思えたら、それは愛だ

ふたりでは、会わないようにしていた。 口紅は、いくつかの色を混ぜると決めている。1番近くでわたしを見ることのできる男に見破られないためだ。わたしの本性や考えていることを、唇の色ひとつで見透かされないためだ。 適当に選んだ3色で作った唇は恋の色…

夏の夜のきらめきは美しくて苦手だ。

ふと寝苦しさに目を覚まして枕元の時計を確認してみれば、AM2:43。 まだ、3時前。 8月にさしかかろうとしているだけあって、夜も暑くて寝苦しい。その証拠に、じんわりと汗ばんでいる肌の感触が気持ち悪い。 寝なおす気にもならなくて、窓から外を眺めてみれ…

真夜中がきれいなのは、ひかりが彼らを見守るからだ

わたしね、もし自分の好きな夢を見られるとしたら、真夜中に星をつかまえる夢を見たいの。 星をつかまえたいの? そう。 どんなふうに? まず、真夜中になったら家をそうっと抜けるの。わたしの家で飼っているカニンヘンダックス、見たことあるわよね? あの…

「平成」の青い春はもう二度とやってこない。

まるで初夏のような、肌をジリジリと焼く陽射しを感じながら、「平成最後の5月」の言葉に小さな衝撃をうけた先月末。 来年の4月まで何でもかんでも「平成最後の〜」がつくのだろうと予想できてしまうことに苦笑いが漏れてしまいそうになるけど、「平成生まれ…

最低で最高な、平成最後の夏を。

平成最後の夏がやってくる。 わたしが高校生だったころ、もう3年も前になるが、あの頃はまさか「平成が終わる」だなんて思いもしなかった。 ‘‘JK’’というウルトラハイパー最強な肩書きがいつの日か無くなるなんてウソだと信じ、四方八方を緑に囲まれた田舎に…

胸を過ぎった確信に近いなにか

「今日は洗濯物がよく乾くでしょう」 テレビから聞こえるお天気キャスターの声に耳を傾けながら、寝起きで働かない頭をソファーの背に預ける。 窓の外に目線をチラッと動かせば、春の嵐が過ぎ去った雲ひとつない真っ青な空。ゆるやかな風に揺れる青々とした…

恋愛感情よりも先に引き寄せた確信

それは、確信に近いものだった。 ‘‘あ、わたし、この人と結婚するだろうな’’ 左耳からスルリとわたしのなかへ入り込んできた声と、頭上から突然降ってきたことば。そして、これまでにない速さと深さで刻まれる鼓動。 口に咥え、火を付けようとしていた煙草を…

愛ってむずかしい。

「そしてそれくらいで、人を愛するにはちょうどなのだ。」 いつか、本で見た一文を思い出す。 気持ちには容量があって、それが少なすぎても多すぎてもいけない。特に、愛は、その分量の調節が難しい。 少なすぎる愛は不安を生んで、多すぎる愛は痛くて逃げた…

『愛するということ』

「そしてそれぐらいで、人を愛するにはちょうどなのだ。」 GWの足音が微かに聞こえているとはいえ、まだ4月。iPhoneの天気予報アプリによると外の気温は26℃らしく、(地球も終わりへと走り出したのか)なんて考えながらベッドの上で伸びをしたのち、ポツリと…

きょうで終わりにしよう。

男女の友情は成立するかしないか、どちらだとおもうかと聞かれれば、答えは「イエス」であり「ノー」。友達だったふたりが、ほんとうに小さなきっかけで、友達以上恋人未満になる。こうもあっけなく、曖昧な関係に変化してしまうことを、わたしは知りたくな…

目が悪くて、ほんとうによかった。

友人のあおとふたりで、ブログをはじめた。 お互いに送り合った写真を元にショートストーリーを考えてみたり、小説の一文からふたりで違う物語を紡いだり、あったことやなかったこと、ありもしないことやあってほしいことを淡々と綴る。 会社の飲み会で疲れ…